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【カーボンクレジットを学ぼう】第6章-1 カーボンクレジットの活用事例― 企業の活用事例 ― クレジットは「最後のピース」

第6章-1:カーボンクレジットの活用事例-クレジットは「最後のピース」

カーボンクレジットは、企業にとって「環境のための寄付」ではありません。正しく使えば、排出削減の努力を補いながら、社会からの信頼を積み上げる道具になります。中高生向けにたとえるなら、クレジットは「宿題をサボるための裏ワザ」ではなく、**“どうしても解けない最後の1問を埋めるヒント”**のようなものです。まず自分で解く努力をして、それでも残る分を補う。これが基本です。

1) 航空・旅行:どうしてもゼロにできない排出をどうする?

飛行機は便利ですが、CO₂排出が大きい移動手段です。だから航空業界では「燃料を減らす」「新しいエンジン」「SAF(持続可能な航空燃料)」などに取り組んでいます。SAFは身近なものから作られる燃料で、使い終わった てんぷら油(廃食用油)や、サトウキビとうもろこし、ゴミから作られる燃料のことです。ちゃんときれいにして加工すると、普通の航空燃料と同じように使えるのと同時に植物などから作られるためCO2も出さない燃料です。そのため、航空業界では切り札として考えられていますが、てんぷら油やゴミを回収する仕組みを作るのにコストがかかるのと、十分に量が確保できない問題があるため、でも、すぐに現在のジェット燃料並みに普及することはできません。

そこで登場するのが カーボンオフセット付き航空券です。
利用者が追加料金を払うと、その分でクレジットが購入され、飛行機で出た排出の一部または全部を相殺します。

ここで大事なのは「買えばOK」ではなく、航空会社側も同時に

  • 新型機への切り替え
  • ルート最適化(遠回りを減らす)
  • SAF利用拡大

などの努力を続けていることです。クレジットはその努力を“最後に支える”役割です。

2) 製造業:鉄・セメント・化学は“難しい科目”

鉄鋼やセメント、化学は、CO₂を大量に出しやすい産業です。理由は単純で、製造の過程で高温の熱が必要だったり、化学反応そのものからCO₂が出たりするからです。高温というのは1,000℃といった高温で、電気ではその温度まで鉄やセメントの温度を上げることができないのです。電気であれば再生可能エネルギーへの転換も比較的しやすいのですが、前述のSAF同様、石油やガスや石炭を使う場合には水素を燃料にする必要があり、その分コストが高くなるので、なかなか難しいのです。

つまり、頑張って省エネしても、すぐには「ゼロにしにくい部分」が残ります。だから製造業では次のように考えます。

  • まず:省エネ、再エネ導入、設備改善でできる限り減らす
  • 次に:残る分をクレジットで補う
  • さらに:将来は水素・CCUSなどの技術で残った部分もゼロにする

中高生で言うなら、「勉強しても満点は難しい科目がある」みたいな感じです。でもだからといって諦めない。努力しつつ、仕組みで補う。それが現実的な戦略です。

3) IT・小売:日常に近い場所でも活用が進む

IT企業は工場を持たない場合も多いですが、実はデータセンターが大量の電力を使います。皆さんも最近使い始めたAIは大量の処理を必要とするため、いままで以上に大量の電力をデータセンターで使ってしまいます。
そこで

  • データセンター電力を再エネに
  • サーバー効率を改善
  • 残りをクレジットでオフセット

という取り組みが行われます。

小売でも活用が広がっています。たとえば、商品に「オフセット済み」と表示したり、売上の一部でクレジットを購入して「この商品はCO₂を埋め合わせています」と示す動きです。 これは“買い物を通じた環境参加”を作る工夫でもあります。

4) 企業にとってのメリット(なぜ使う?)

企業がクレジットを使うのは、単に「いい会社に見られたい」からではありません。理由は現実的です。

  1. 取引先が「排出削減の証拠」を求める(サプライチェーン圧力)
  2. 投資家が「脱炭素戦略」を評価する(資金調達に影響)

この2つの圧力や評価をするのは、そもそも化石燃料の大量消費に依存していると、将来予期しなかったことが起こった際に、燃料や材料の値段が急激に上がってしまうからです。皆さんも最近のイラン情勢で、ガソリンやジェット燃料が急激に上がり、そもそも石油を基にするナフサが手に入りづらくなっているといったニュースを聞いていると思います。再生可能エネルギーの使用率が高まれば、供給が急に止まったり、値段が急にあがったりすることはありません。

そういった仕組みを常に作って準備している企業を、取引先や投資家も評価するのです。その時の、省エネや再エネを促進するツールがカーボンクレジットでもあります。

さらには、以下のことも同時に期待できます。

  • 採用で「環境姿勢」が見られる(将来も地球に住まなくてはいけない若い世代の価値観)
  • 商品の差別化になる(環境ラベル・ストーリー)

つまり、クレジットは「企業の信用」をつくる材料の一つになっています。

5) ただし注意:クレジットだけで“いい話”にしない

企業がクレジットを使うときに一番大事なのは、「自社削減の努力」とセットで示すことです。
努力が見えないと「グリーンウォッシュ(見せかけ)」と言われてしまいます。
クレジットは“最後のピース”。最初から最後までクレジット頼みは、信頼を失いやすいのです。

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